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マニアの扉~家づくりのサイエンス~

住むと病気になる?

激増するシックハウス症候群

ここ数年の日本の住宅をめぐる問題の中で最も大きな関心を集めたものが「シックハウス症候群」でしょう。

シックハウス症候群とは、新築や改築直後の住宅に入居した時に、目がチカチカしたり、吐き気がしたりする現代病。合板、壁紙、床材の接着剤などに含まれるホルムアルデビドなど揮発性の有機化合物が空気中に放散されるのが原因とされています。」

人間は一日に30kg以上もの空気を体内に取り入れていますが、そこに有害な物質が混ざっているとしたらどうでしょう。確実に心身が蝕まれるはずです。しかも良い空気と悪い空気を区別して吸うわけにはいきません。そうした事態が実際に家の中で過ごすだけで引き起こされるのですから、シックハウス症候群は実に恐ろしいものです。

現在、シックハウス症候群の患者は100万人にも達するという説もあります。住宅メーカーに対して購入代金の返還など損害賠償を求める訴訟も多発しています。

このように、そこに暮らすだけで病気になってしまう家が、日本ではどんどん増えてきているのです。

有害物質一覧「健康住宅研究会」優先取り組みの有害6物質

有害化学物質名 建築用途 毒 性
1 ホルムアルデヒド 合板、化粧合板 発ガン性、アレルギー感作作用、視力障害、呼吸器障害
パーチクルボード、MDF
構造用集成材
断熱材(ガラス繊維)
フローリング(合板)
ビニールクロス、クロス用接着剤
建築用接着剤
防腐剤、消毒剤、脱臭剤
2 トルエン 木材保存剤(加圧注入、表面処理) 中枢神経毒性、生殖毒性、肝臓障害、腎臓障害
油性塗料
ニス、シンナー、ワックス
ゴム系接着剤
樹脂系接着剤
溶剤系接着剤
3 キシレン 木材保存剤(加圧注入、表面処理) 発ガン性、中枢神経毒性、生殖毒性、皮膚アレルギー、環境ホルモン作用
油性塗料
樹脂塗料
ニス、シンナー、ワックス
フローリング(合板)
ゴム系接着剤
樹脂系接着剤
可塑剤の原料
4 木材保存剤クロム・銅・ヒ素化合物、アルキルアンモニウム化合物、有機ヨード系薬剤、クレオソート、クロルピリホス、ホキシム、ピリダフェンチオンなど 土台や木材の防腐・防虫・防カビ剤として使用。 発ガン性、中枢神経毒性、変異原性、生殖毒性、環境ホルモン作用
加圧注入、表面塗布、接着剤に混入処理など。
5 キシレンフタル酸化合物、有機リン系化合物 塩化ビニール(燃焼するとダイオキシン発生)を柔らかくするのに添加。ビニールクロスに40~60%含まれる。 発ガン性、神経毒性、生殖毒性、催奇形性、内分泌異常、環境ホルモン作用
断熱材(硬質ウレタンフォーム)
木工用接着剤
樹脂系接着剤
6 防蟻剤
有機リン系(クロルピリホス、ホキシム)
ピレスロイド系(ピリダフェンチオンなど)
土台・柱の木部処理剤として塗布 神経毒性、視力障害、発ガン性、変異原性、環境ホルモン
土壌処理として床下全面に散布。
木材保存剤

「健康住宅設計施工ガイドライン」(健康住宅研究会)より
毒性については、『農薬毒性の事典』植村振作他著(三省堂)、『発ガン物質事典』泉邦彦著(合同出版)を参考

不完全な換気による健康被害

最近では特定の化学物質を排除し「健康住宅」をうたう住宅も登場しました。また、シックハウス対策を盛り込んだ改正建築基準法が平成15年7月1日に施行されるなど、行政の取り組みも進んでいます。

ホルムアルデヒドは室内空気汚染物質の代表的な存在で、人体に大きな悪影響を与えます。その意味で住宅の建材から発生するホルムアルデヒドを抑えることは大切です。しかし実はそれだけではシックハウス症候群の根本的な解決にはならないのです。

というのも、家の中ではカーテンや家具、衣類、家電製品、芳香剤や洗剤など、実に様々なものに化学物質が含まれているからです。これらを家の中からすべて追放することは現実的に不可能でしょう。それよりも、住いの換気が不十分であるために化学物質が室内に閉じこめられてしまう現状の住宅の造りの方が問題なのです。

既にご紹介したように、戦後の日本の住宅は密閉化の道を一途に進みました。今では風の通り抜けるような家はむしろまれで、十分な換気がされている家庭は少なく、室内空気に化学物質がこもってしまうばかりか、湿気を好むカビやダニが繁殖するようになってしまったのです。言うまでもなく、カビやダニの死骸はアトピー性皮膚炎、喘息などの原因の一つ。いくら化学物質の発生を抑える建材を使用しても、十分な換気を行わない限り、今の日本の住宅では不健康な室内環境になってしまうことが避けられないのです。

室内のホルムアルデヒド濃度と子供の喘息率

室内のホルムアルデヒド濃度と子供の喘息率・グラフ

ホルムアルデヒドが子供に与える悪影響は、このように明確です。

ヒートショックにも十分注意を

近年、汗を上手にかけない子供が増えていると言われています。理由は簡単。生まれたときから、エアコンの効いた室内で育ったことから、自ら体温調節する機能がしっかりと育たなかったためです。

一方、暖房についてはどうでしょう。日本の住宅は、一部の部屋だけを、限られた時間だけ暖房する形になっています。そのため冬は部屋間に寒暖の差が激しく、寒い浴室やトイレで亡くなる老人が増えてくるのです。こうした急激な寒暖差による悪影響をヒートショックと呼びます。

本来は家族の安全を守るべき住宅が、実はそのシェルターとしての機能を十分に発揮していないばかりに、場合によっては健康被害をもたらしかねないわけです。換気や冷暖房のあり方について、根本から考え直さなければなりません。

浴室内死亡事故と気温

浴室内死亡事故と気温・グラフ

気温の低い時期ほど浴室内での死亡事故が増えるという相関関係がはっきりわかります。