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マニアの扉~家づくりのサイエンス~

住宅における断熱と気密の大切さ

お茶の水女子大学 名誉教授 田中 辰明

外断熱工法の普及化と気密性

どの国の住宅もその国の地理的な影響と文化的な影響から作られていると言って差し支えないでしよう。まず地理的要件を見ると、わが国は熱帯から寒帯にまで至る細長い島々の連続であります。気候も地方的には幾分異なりますが、概して潮流やその他の影響により、温和で湿潤であります。

そして空気は水蒸気を多く含み、冬よりも夏の方が凌ぎがたく、雨量も多いという性質を持っています。建築材料も国内に木材が多くあったことから木造建築が発達してきました。木造建築は法隆寺の中門に見られるように乾燥した状態で維持されれば極めて長期に使用することができます。

従来の夏に凌ぎやすく生活が出来る木造住宅は冬には非常に寒く、住宅内での活動にも制限を受ける傾向がありました。冬もしのぎやすくという観点と最近では省エネルギーが重要視され、木造住宅でも断熱が施されるようになりました。

さらに合理的な断熱方法として外断熱工法も普及の兆しが見えています。仮に外断熱工法を採用し、断熱性能を増しても住宅の気密性が悪ければ、断熱の性能を発揮する事はできません。気密とは住宅の部材と部材の間の隙間を無くする事です。

C値は気密性を表す数値

気密性が悪い住宅では室内の空気と外気が常時入れ替わりますので、当然エネルギーのロスが大きくなります。気密性、断熱性能についてはサーモカメラを用いて性能の欠陥を発見することができます。

気密性を表す数値についてですが、わが国ではC値(相当隙間面積)というものを用いて評価しています。これは、隙間の面積(c㎡)を床面積(㎡)で割ったもので、床面積1㎡あたり、何c㎡の隙間があるかというものです。

ここでちよっと疑問なのですが、C値は階高が高い住宅では階高が低い住宅に比べて不利になります。この測定には外壁に送風機 を設置し、室内空気を排出し、送風量と室内外の密度差(圧力差)からC値を求めます。 外部から室内に空気が入りやすい構造の住宅と、逆に室内から外部へ空気が漏れやすい住宅があります。

従って丁寧な測定では送風機を逆に回転させて試験を行う場合もあります。またトレーサガス (二酸化炭素など)を室内に放出し、時間経過と共にガス濃度の減衰を測定し換気回数 (1時間に何回室内空気が入れ替わったかと言う評価指数) を測定するという方法もあります。昔からよく用いられた方法ですが、ガスを使用する点で人体への影響も無いとは言えず、最近はあまり利用されません。C値は一般住宅で10c㎡/㎡と言われ、次世代省エネ基準で5c㎡/㎡です。

気密性の国際規格化

わが国の現状ではC値は1c㎡/㎡で十分小さいと言われていますが、0.2c㎡/㎡という木造住宅も出現し喜ばしく思っております。わが国ではC値を用いていますが、外国では別な指標で表しています。ドイツは換気回数で表しますし、英国では密度差が50Paである場合の外皮面積1㎡につき1時間当たり隙間から出る風量(m3)で評価しています。

気密性の評価方法も国際的に統一されるのが望ましく、筆者も参加をしている国際標準化機構ISOTC163という組織が現在検討を行っています。気密性評価に関する国際規格を作ったうえで新築住宅では測定を行い、省エネルギー住宅の評価指標とすることが望ましいと考えます。

断熱性能、気密性の保持が一番重要

現在省エネルギー住宅と申しますと屋根に太陽電池を設置する、ヒートポンプを用いる、空調機や冷蔵庫を効率の良いものに置き換える、燃料電池を設置するなども考えられています。しかし住宅の断熱性能、気密性の保持が一番大切で、これをしっかりやらなければ本当の省エネルギー住宅は実現しません。

断熱性能、気密性の良い住宅は熱的な快適性も満足させることができます。快適性も満たした住宅こそ本当の省エネルギー住宅であります。

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